光とは何か-1
光技術のことを把握する上で、ある程度の光の知識は必要です。まずは光とは何かについて、前回説明した物理学のプロセスを回してみるとしましょう。近代物理学の祖、アイザック・ニュートンは、光の直進性と反射を観て、光の正体は光線と呼ばれる線を構成する粒子であると考えました。光=粒子モデルですね。ちなみに光を光線という線で捉える学問は幾何光学と呼びます。
「光の直進性の粒子モデル」
「光の反射の粒子モデル」
しかし、光を粒子とすると、屈折や回折などの現象を説明できません。そこで、光を波とする学者達が現れました。特に、ヤングの実験や複屈折は、光は波、それも横波であるというモデルをより強固にしました。
「光の屈折」
光が屈折率の異なる媒質の境界面で曲がるのは、光の波が進む速さが媒質によって異なるためです。
「ヤングの実験」
二つの開口を通った光は回折し、二つの回折波は干渉を起こします。その結果、右にあるスクリーンに干渉縞と呼ばれる縞模様が現れます。
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「複屈折」
方解石という石を通してものを見ると、二重ににじんで見えます。(ただぼやけているのではなく、二重ににじんでいることがミソ。)これは、光には偏光というパラメータがあるからだと考えられました。縦偏光と横偏光は、振動する方向が異なる波動です。方解石の中ではこの二つの偏光の伝播速度が異なるために、屈折と同じ現象が起きて、二つの偏光の進む方向が異なることから、像が二重に見えるのです。偏光の存在は、光が縦波ではなく横波であるという証左でもありました。(そしてこのことは次に述べるエーテルの存在を否定する一つの要因にもなったのです。)
光の直進性や反射など、光を線と捉える捉え方は、光は波面に垂直な方向に進む、というモデルをもって、光=波モデルに取り込まれました。光線は光の粒子がつくるものではなく、光の波の挙動によるものだった、というモデルです。
「光波と光線」
光=波動と分かったところで、学者達は、では何を媒質に光の波は空間を伝わるのか、と考え始めました。これがエーテルと呼ばれるものです。しかし、エーテルは様々な実験から物質としての存在は否定されたので、光は媒質が何にもなくても空間を伝わる、ということになってしまいました。困っていると、電磁気学という学問がヒントを与えてくれました。電磁気学とは、その名の通り電気と磁気についての学問で、その体系はMaxwell方程式という4つの方程式に集約されます。そのMaxwell方程式をいじってみると、電磁波という波動が導出されます。これは、電気と磁気が互いに相互作用しながら空間を媒質なしに伝播してゆく波です。
「真空中を伝搬する電磁波」
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そしてなんと、理論的に導かれた電磁波の伝播速度は、実験で確認された光の速さとよく一致していたのです。このことから、光は電磁波である、というモデルが出来ました。このモデルは、Maxwell方程式を原理とし、大変優れたモデルだったのです。光とは何か-2に続く。