紫外線ランプ
前回の最後に、ランプがまだLEDに完全にとって変わられない領域として、多波長領域と紫外線領域があると説明しました。今回は、紫外用ランプについて書きます。
紫外線とは、波長10~400 nmの範囲の光のことです。つまり、可視光よりもさらに短い波長です。我々が見えるもっとも短い波長の光は紫色なので、その外、紫外線と言われます。紫外線と一口にいっても、いくつかに分類されます。
近紫外線(380~200 nm)
・315~400 nm・・・UV-A
太陽から数%が地表に届く。皮膚に作用し、シミ(実は日焼けが酸化したもの)、シワの原因となる。
・280~315 nm・・・UV-B
太陽から0.数%が地表に届く。日焼けの原因となる。ビタミンDを生成する作用もある。
・200~280 nm・・・UV-C
オゾン層のおかげで地表には届かない。生体に対して最も有害。
遠紫外線・真空紫外線(10~200 nm)
酸素分子や窒素分子に吸収されるので、真空中でないと伝播しない。
なにやら恐ろしい感じです。波長が短いので、その分エネルギーも高く、与える影響も大きいということですね。次は紫外線ランプの発光モデルの一例を見てみましょう。
紫外線ランプは放電型ランプです。ランプの中にはアルゴンガスと水銀ガスが封入されています。ランプの両端の電極に高電圧をかけると、管内の電子が陽極に強く引かれてアルゴンと衝突します。電子の衝突により陽イオンになったアルゴンが陰極に衝突し、陰極から二次電子をたたき出すことで放電が始まります。放電された電子によって水銀原子の電子が励起され、紫外線が放出されます。
「紫外線ランプについての資料」
http://www.okayaelec.co.jp/catalog/uv/lamp/p3.pdf
「水銀が発する紫外線」
「水銀の発光スペクトル」
Author: John Hamann License: CC by-sa 3.0 2.5 2.0 1.0
File:Visible spectrum of mercury.jpg - WikimediaCommons
「水銀ランプの紫外線スペクトル」
紫外線が水銀原子から発生したはよいものの、ガラス管の外に出なければいけません。そこで、紫外線を通す特殊な窓材使用されます。よく使用される窓材は、UVガラス、合成石英、MgF2などです。
ランプの構造のイメージはついたでしょうか。次は、応用先についてです。
紫外線ランプを含む紫外線光源の応用のされ方は次の2パターンがあります。
1、紫外線を使って対象物を分析、測定する
2、紫外線を対象物にあてて作用を起こす
この2パターンは全ての光源に共通します。分かりやすく言えば、光を当ててものを見るか、光を当てることでものの性質を変えてしまうかです。まずはパターン1の実例を見てみましょう。紫外線ランプを製造しているメーカーのHPを見れば、
・液体クロマトグラフ
・分光光度計
・吸収光度計
・膜厚系
・半導体検査装置
・水質、大気等の各種環境分析装置
次はパターン2です
・水や空気の殺菌
・水の浄化
・半導体洗浄
・半導体の回路パターン焼付け用光源
・UV改質
・UV硬化樹脂用光源
いくつかのメーカーのHPを調べただけでもこれだけの応用があります。紫外線LEDの応用先もこれと同様です。紫外線の持つ応用可能性は多岐に渡ります。次回以降は、以前にも紹介した下の図に則って、紫外線ランプを含む、ランプがどのように作られているかを掘り下げると同時に、紫外線ランプの応用先にはどのようなものがあるかを広げてゆきたいと思います。