UV硬化樹脂、UV接着剤・・・スマホに使われる紫外線技術
前回に引き続き、紫外線の応用を書きます。今回は、紫外線(UV)をあてると硬化するUV硬化樹脂です。その性質から、物と物をくっつける接着剤や、インクと同等の機能をもちます。大まかに、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル・アルキド樹脂などの樹脂が使われているようです。
「UV硬化、光硬化について」
UV樹脂は、例えばスマートフォンやタブレットに利用されています。一番外側(表面側)のカバーパネルとタッチパネル、タッチパネルと液晶パネルの間にUV硬化樹脂を充填して、紫外線を当てて硬化しているのです。PCやTVにも利用が広がっている技術です。
UV硬化樹脂の優位点は次のようなものが挙げられます。
・通常の接着剤や塗料よりも硬化速度が速く、作業時間を短縮できる 数時間→数秒!
・紫外線を照射しないと硬化しないので、塗布工程の制約が少ない。
Etc
ただ、問題点としては、光が当たりにくい複雑な構造をしている材質には使用が難しくなる、ということが挙げられます。
次は、UVインキです。UV硬化技術を印刷に応用したものです。普通のインキは熱乾燥によって素材にインキを定着させますが、UVインキは紫外線の照射によって定着させます。やはり瞬間硬化であり、印刷工程の効率化、省エネ化、小スペース化を実現することができます。紙だけではなく、様々な素材に印刷することが出来、模型の塗装などにも使われています。ただ、印刷の質感は従来の油性インキのほうが優れているそうです。UVインキを使ったインクジェットも普及が進んでいます。
「UVインキについて」
「UVジェットインキについて」
また、UV硬化技術は3Dプリンタにも使われています。3Dプリンタの基本的な仕組みは、作りたい物体を輪切りにして、CTスキャンのように、ある面を作ったら次の面、というように面構造を積み上げていって立体を作ります(これを積層造形法といいます)。この際良く使われるのがUV硬化樹脂です。光を当てると即座に硬化するので早さもあり、なにより紫外線レーザーは波長が短いため焦点スポット径が小さくでき、より微細な構造を作ることが出来ます。
「3Dプリンタ」
3Dプリンタについて|高性能3Dプリンタメーカーのキーエンス【アジリスタ】
3Dプリンタの市場は年々拡大しています。もともとはメーカーのプロトタイプ作成に用いられていたようですが、現在は医療機器や模型などを作るまで発展しています。また、一般の人にも手が届くような値段でamazonに売られています。ものづくりというとメーカーや職人の専売特許だった観がありますが、3Dプリンタの登場で、(大量生産とはいかないまでも)個人のアイディアの具現化としてのプロトタイプ作成が一般層でも可能になるのです。これはとても大きな意味を持ちます。インターネットを介して自分の知識やアイディアを、文章(情報商材)や絵(コンセプトアートなど)、音楽にして売るという産業が出てきている今、プロトタイプを作ることができるようになれば、より個人がビジネスを掴むチャンスは増えるでしょう。このような背景を後押しに、3Dプリンタの市場が拡大すれば、それに使われる紫外線光源・レーザーの需要も高まると考えられます。また、他の多くの製品のように、市場が拡大した末に供給が行き届き、安価になることで市場規模が飽和して拡大しなくなっても、3Dプリンタに内蔵される紫外線レーザーやランプは定期的に交換・校正しなければなりません。これらの「高性能な部品」を作っているメーカーは、長期に安定する企業になり得るかもしれません。
「市場レポート」