光とは何か-3

 実験的事実からは、「光は波としての側面と粒子としての側面をもつ」ということが言えます。しかし、これは光=波モデルが成立する実験事実と光=粒子モデルが成立する実験事実が混在しているに過ぎません。二つの相反するモデルを両立させうる原理が必要です。この原理を見出すために大いに貢献したのが量子力学という学問です。光の、波と粒の性質について次のような原理が見いだされました。これは相補性といわれる原理です。

 

相補性とは、光や量子の粒子性と波動性や、古典論における因果的な運動の記述と量子論における確率的な運動の記述のように、互いに排他的な性質を統合する認識論的な性質であり、排他的な性質が相互に補うことで初めて系の完全な記述が得られるという考えのことである。相補性 - Wikipediaより。

 

つまり、光は波と粒子双方の性質をもつ不思議なものであり、波の性質が強いときには粒子としての振る舞いは小さくなり、粒子の性質が強いときには波としての振る舞いは小さくなる、ということです。この不思議なものは量子と呼ばれます。やはり、波と粒子の二つの側面を持つ光というものは、不思議であるといわざるを得ません。また、光電効果のように、新しい実験事実が発見されて今までの議論が更に進む可能性もあります。しかし、今のところは、光は波と粒子両方の性質を持ち、二つの相反する性質は、それぞれが補い合うことによって光という現象を完全に成立させることができる、と言われています。相補性のイメージ画像を下に示します。ご存知だと思いますが、陰陽図と呼ばれるものです。相補性を提唱したニールス・ボーアは陰陽図と自分の提唱した相補性の類似性を知って、陰陽図をもとに自分が受賞したエレファント賞の勲章をデザインしたそうです。

 

「ボーアのデザインした勲章」

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                                                                                    Author: GJo License: CC by-sa 3.0

                                              File:Coat of Arms of Niels Bohr.svg - Wikimedia Commons

相補性はイメージですが、数学的にも、波と粒子の性質が両立し得ることが分かっています。これは先ほどの量子力学を発展させた、場の量子論と呼ばれるもので、電磁場そのものが量子化されていることを示しています。

 

とても難しくなったかもしれませんが、光というもの、いや、世界そのものが未知なるものであるということです。

 

さて、光そのものへの考察はここで終わりにして、次回からは光技術に関する記事に移ります。